音楽に知識の乏しい者として
音楽に知識の乏しい者としていつももどかしいのは、曲の印象を説明できないことである。この和音がお洒落だよね、とか、コード進行が説得力あるでしょ、とか言ってみたいのだけど、言えない。好きな曲がなぜ好きなのか見当もつかないのだ。
はなはだうろ覚えだが、『リアリティー・バイツ』でイーサン・ホークが「このチーズバーガーはうまい、それは確かだ。それ以上何を求めるというんだ」というふうなことを言った。私にはそんな台詞も都合よく使って、好きだから好きでいいよね、と済ましてしまうところがある。
だがそうした傾向は曲を作る際には欠点でしかない。あんな感じにしたいと思っても、何をどうすれば再現できるのか、推測が働かず、いいじゃんと思う音が聞こえるまで試すしかない。同じ試すにしても、あたりぐらいつけられたらどんなにいいだろうと、勉強不足を棚に上げて零している。
はじめて聞いたラナ・デル・レイの曲は「ウルトラヴァイオレンス」だった。なんじゃこれ、独特だなと思った。それから他の曲もいろいろと聞いてみたが、共通する独特さがどこから来るものなのかはやはりわからなかった。声なのか、という問も浮かんだが、そのそばから、そんなに単純ではないはずだと異議が呈された。
ここ数日、『ウルトラヴァイオレンス』と『ハネムーン』の2枚のアルバムを交互に聞いているが、結局、なぜそれらが好きなのかはわからずじまいである。なるほど、アルバムジャケットは内容をよく表しているな、後者では光が少し強くなった気がする、と、客観性からはほど遠い印象をつぶやいてみては苦笑している。